山に有り得ない動物《伝聞》
昔、友人から聞いた、その友人と仲間達の体験談です。
友人は地方の山深い地域に住んでいました。 過疎化が進み、友人が高校生になる頃には地元の小学校は併合され、いくつかあった学校が一つになってしまったというので、かなり奥まった所に住んでいたのでしょう。
そんな友人が小学生の頃、体験した話です。遊び場所といえば、もっぱら近くの山や川でしたが子供にとってはこの上ない遊び場で、毎日飽きる事もせず暗くなるまで駆け回っていたそうです。
山や川といっても私たちが想像するような街から気軽に入れる場所ではなく、全く人の手が入っていないところも多々あり、山であれば昼間でも木々に囲まれると暗くなって、時間や方向感覚が狂ってしまう、現に毎年、遭難者が必ず出てしまうような地域だと言っていました。
ある時、いつものように仲間達と山を散策しながら”冒険”と称して遊んでいたそうです。小学生でも高学年になると体力がつき、それに加えて毎日自然の中で遊んでいるので、大人でもなかなかいけない山奥まで深く入って冒険していました。
もちろん子供達だけで山の奥深くへ行くいうのは危険極まりない事で、再三に渡って大人たちから注意を受けていたのですが、遊び盛りの自然児が言うことを聞くわけもなく、せめてもという事で熊よけの鈴を持たされたり、間違って猟師に撃たれたりしないように派手な色の服を着させられたりしていたようです。
山を登り、疲れたら持っていったおやつを見晴らしの良いところで食べ、そしてまた山を登る。そんな事をしていると目の前の茂みで大きな動物が動いていたそうです。 見たところ鹿のようですが、それでもあの大きさでぶつかってこられたらかなり危険です。 山で野生の動物を見るのは珍しいことでは有りませんが、あまりに近すぎたので木の影に隠れて鹿を刺激しないように観察していました。
”おかしいな? みんな熊よけの鈴をつけているのに動物が逃げないなんて。”
友人がそう思っていると仲間の1人が声をあげました。
”カンガルーだ! あれカンガルーだよ!”
は? いやそんな馬鹿な? と思いながらも、よく見てみるとその動物は確かにテレビや図鑑で見るカンガルーそのものだったそうです。
みんなでポカンとしているといつの間にか、そのカンガルーはどこかに行ってしまったそうですが、これで終わりではなく他にも居るはずの無い動物を何度も見かけたと言います。
ある時は沢のほとりにワニが現れ、ある時は甲羅が30センチを超える大きな蟹がいたそうです。そしてある時は山犬?というか日本狼のような動物が現れ、又、ある時はダチョウがいたと言います。そして最後に、ここまで得意げに話していた友人が少し恥ずかしそうに教えてくれました。
恐竜を見たと。
人間の大人よりやや大きいくらいで、よく映画などで威嚇する時のように二本足で立っていたそうです。
こんな話をしても誰も信じてくれるはずもなく、仲間内だけの語りぐさとなっているようですが友人は間違いなく見たといっていました。一緒に行っていた仲間達もみんな目撃しているそうです。
当時の大人たちからは狐に化かされただの、大人をからかって悪ふざけしているだの散々言われてしまったようですが。
日本の山奥にはまだまだ不思議な場所があるみたいです。
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